「噛めない」「噛まない」「やわらかい食事」が
口腔機能を衰えさせ、誤嚥を招いています。
その大きな原因が「噛めない入れ歯」です。
その入れ歯の調整についてはこれまで、痛みが出れば直す程度で、
「しっかり噛んで食べることができているか?」までを確認することは怠られがちでした。
その結果、会話が弾み笑顔あふれる楽しい食事が、不快なストレスをともなうあきらめの努めになっている人たちがたくさんいます。
具体的には、入れ歯が合わないためにしっかり噛んで食べられないと、やがて刻み食ややわらかい食事になり、丸呑みするか舌で潰して飲み込むだけの食事になります。
噛まない食事が長く続くと、唾液の分泌や、舌と頬と顎の見事なまでの協調運動である咀嚼する機能が全く使われなくなり、同時に嚥下能力が低下し、進行すると咽頭内に唾液や食物の一部が残ります。しっかり咀嚼しないで丸呑みしたり、流し込んだりすることで、誤嚥が生じます。
このような状況で、誤嚥性肺炎で緊急入院すると、肺炎の治療中は口から食べることを止め血管栄養となります。肺炎の治療が終わっても、誤嚥の危険性があるということで普通の食事に戻すことはなく、鼻腔栄養や胃ろうなど、医療の介入が進むことになります。応急処置としては栄養を摂る有効な方法ですが、長引くほど普通の食事摂取から遠ざかります。
口から摂取することができても以前の食事形態より後退し、ミキサー食やペースト食になります。退院しても介護施設ではそれを引き継いで(それに縛られて)、その後の食形態を見直すこともほとんどありません。入院中には入れ歯も使わず、退院時にはすっかり合わなくなっていることや、この食形態では咀嚼することもないので入れ歯の使用を考えることもありません。亡くなってやっと顔を整えるために入れ歯を入れる、というなんとも残念な結果になります。
しかし、どの段階からでも、入れ歯調整で普通の食事をしっかり噛んで食べる、本来の咀嚼機能を取り戻すことができれば、医療の介入のない自立した生活に戻る可能性が高まります。
竹内孝仁教授(国際医療福祉大学大学院教授)も「普通の食事を自分でしっかり咀嚼した食塊こそ、誤嚥を防ぐ最も安全な形だ」と語っています。
そして本来、噛めない原因を取り除き、咀嚼を取り戻すことは歯科医師の責任なのです。
多くの人が、高齢になると咀嚼力は衰えて、噛めないのも仕方がないとあきらめますが、その象徴が入れ歯です。
こうした高齢者を救うために、河原英雄先生が導き出したのが、「前歯でも噛める入れ歯」の義歯調整です。
この義歯調整で河原英雄先生が大切にすることがあります。
それは義歯調整後に噛めることを確認する「フードテスト」です。これを河原先生は「歯科医師が患者から受けるテスト」だといいます。
この患者の評価を謙虚に受けるという姿勢により、患者は「噛むことを取り戻した」ことを実感し、それが希望と自信につながっています。
そして、ここからが患者の日常の生活を支える「咀嚼を取り戻すこと」のスタートとなります。
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